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第拾話・動揺。(一)

 最近明るくなった。  金糸雀(かなりあ)に言われたそれのせいで、大瑠璃(おおるり)はその日、落ち着かない気分のまま過ごしていた。  どういう顔をして間宮(まみや)と会えばいいのかすっかりわからなくなってしまった大瑠璃は、気もそぞろになるばかりだ。  だからお客からたんまりと御勤(おつと)め品をいただくことも忘れてしまっていた。  ……本当に、自分はいったいどうしてしまったんだろう。  心乱れる大瑠璃は今日ばかりは間宮と会わずに済ませたいと思った。するとどうだろう。今日というその日は大瑠璃が願ったとおり、間宮の登楼はなかった。  自由になったその日、当然お客を取る気にもなれない大瑠璃はゆっくり眠ることに成功した。  翌朝、大瑠璃は万全の状態で目覚めた。  ――今夜、間宮が登楼を果たしたとしてもきっと上手くやれる。いつも通り、揚代(あげだい)をうんと搾り取ってやろう。  そう決意したが、その夜もまた、間宮の登楼はなかった。  次の日も、そのまた次の日も――。間宮が花街(はなまち)に顔を出さなくなって四日が過ぎた。  あれほど毎日のように大瑠璃の元へ登楼していた間宮は、ここへきてぱったりと足取りが途絶えてしまったのだ。  そうなると、大瑠璃は少しばかり間宮のことで不安になる。  ――もしかすると続けざまに登楼した結果、とうとう破綻したのかもしれない。なにせ間宮は普通のお客よりも破格の金子を用意していた。破綻してもおかしくはない。それで借金が重なって自ら命を絶った――などということも考えられる。

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