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第拾壱話・報い。(一)

 間宮(まみや)登楼(とうろう)しなくなってから四日が過ぎ、さらに二日が過ぎた。  その間の大瑠璃(おおるり)は、といえば――間宮への見え隠れする得体の知れない感情に頭を悩まされ続けていた。  ――そして今日もまた、夜見世がはじまる。  気分はいまだに沈んだままだ。  そんな大瑠璃のところに登楼したのは、三ヶ月ぶりの馴染み、秋山(あきやま)だった。  秋山は痩せ細った身体に縮こまった肩。顔よりも大きめな黒縁眼鏡を掛けているのが特徴的だ。久しぶりの登楼ではあるものの、控えめな雰囲気は変わらない。  しかし――。  以前よりもずっと痩せたように感じるのは気のせいだろうか……。  それに雰囲気がどことなく陰湿な気がする。  大瑠璃は肩を並べて歩く秋山に眉宇(びう)をひそめた。  そうは思うものの、この花街にやって来るお客は皆、家庭や仕事のしがらみから逃れたいという思いで通っている。  プライベートまで首を突っ込むのは無作法だ。  大瑠璃は秋山の容姿や日常には一切触れず、ねぎらいの言葉をかけることにした。 「秋山様、お会いしたかった。仕事、お忙しかったの?」 「ああ……おかげさまで羽振りがよくってね」  そういえば、秋山はどんな仕事をしていただろう。ふとした疑問が頭の中をかすめた。  しかし今さら彼の仕事が何だったかなんて考えたところでお客に興味を持たない大瑠璃にわかるはずもない。  浮かび上がった疑問を押し込め、上辺だけの笑みを浮かべた。  けれどもやはり秋山の様子がどうもおかしい。大瑠璃が視線を向けるとにっこり微笑み返すものの、焦点が定まっていないような気がする。これはただの思い過ごしだろうか。

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