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第拾話・動揺。(五)

「……どうしてそんなことを?」  大瑠璃は慌てて身体を起こして訊ねると、花鶏は眉尻を下げて悲しそうに微笑む。 「だって、間宮様が登楼されている時の大瑠璃様はとても楽しそうにしてらっしゃったから」 「そんなこと……」  あるわけがない。  ――けれど、そう断言できないのはなぜだろう。  大瑠璃は大きく鼓動する心臓に手をやり、宥めるばかりだった。  《第拾話・動揺。/完》

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