有明行燈(ありあけあんどん)に灯した炎が静かな部屋を照らしている。悲しみの涙が堰を切って溢れ出す。ゆらゆら揺れている空間の中で大瑠璃(おおるり)は嗚咽を漏らし、包み込んでくれるあたたかな体温に身を委ね、泣き続けた。 　――いったいどれくらいの間、そうやって泣いていただろう。 　蘇芳(すおう)との一件以来、心を閉ざしていた大瑠璃にとって、弱点ともいえる泣き顔を他人に見せたのはあまりにも久しぶりだった。 　泣いて、泣いて……。 　込み上がってくる涙を流しきると、ほんの少し平常心を取り戻す。そうなれば次に身をもたげてくるのは羞恥だ。 　子供じゃあるまいし、縋りつき泣いてしまうなんてどうかしている。 　そして彼はお客でもある。そのお客に弱みを見せるのは娼妓にとってよろしくない。 　それなのに、どうやっても間宮に縋る自分を許してしまう。 　それもこれも間宮(まみや)が悪いのだ。 　彼が泣きじゃくる大瑠璃の背を撫でて宥めてくるから……。 　いい加減に泣き止めと短気を起こさず、こうして抱きしめてくれるから……。 　今までのお客なら、自分の欲望を真っ先に解放するのに、大瑠璃の心を優先してくれるから……。 　大瑠璃の心に今の今までずっと埋め尽くしていた悲しみよりも、芽生えた羞恥が勝った。 　大瑠璃は顔を見られたくなくて肩を竦める。 「……大瑠璃？」 　間宮は違和感を覚えたのか、覗き込んできた。 「――っつ」 （見ないで……） 　泣き顔を見られたくない大瑠璃は、精一杯首を引っ込め、間宮の胸に縋りつく。