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第拾弐話・こひごころ。(二)

 とくん、とくん。間宮の心音が緩やかな鼓動を響かせている。心地好い心音が大瑠璃の荒んだ心を宥めてくれる。  大瑠璃を包み込んでくれる腕も、緩やかな心音も――彼の何もかもが大瑠璃を安らかにしてくれる。  うっとりと目を細め、心音に耳を傾けていると、長い指に顎を掬い取られた。  彼に誘われるまま顔を上げると、熱を帯びた視線に射貫かれた。  途端に大瑠璃の身体が熱を纏う。  身体の芯が焼けるように熱くなる。  間宮の視線から逃れられない。  彼は相変わらず綺麗だ。長い睫毛に縁取られた力強い目。高い鼻梁の下にある薄い唇。まるで異国の絵画に登場する人物のよう。  すっかり魅了されている大瑠璃は間宮と視線を重ねる。瞬きをすれば、やっと止まった涙の、最後の一滴が頬を滑り落ちた。  無言で重ねた視線に息が詰まる。  間宮から目が離せない。  すると間宮は突然大きなため息を漏らし、大瑠璃の肩に顔を埋めた。  てっきり口づけられるのかと思った大瑠璃は驚きを隠せない。 「あの、輝晃(てるあき)さま?」  禿(かむろ)だった頃はおろか、娼妓(しょうぎ)になってからもこんなふうにされるのははじめてで戸惑ってしまった。  ――どう接すればいいのだろう。  おろおろする大瑠璃の鎖骨にあたたかな間宮の息が当たる。 「君っていう子はどうしてそんなに……敵わないな」  しどろもどろになる大瑠璃に、間宮はくぐもった声でそっと告げた。 「?」  いったい何が敵わないというのだろう?  大瑠璃にはさっぱり間宮の言っている意味がわからない。

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