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第六話・悲しい過去の傷痕。(三)
――いや、変わったのは表情や雰囲気だけではない。
大瑠璃の心もまた、変化していった。
あれほど褥での所作を毛嫌いしていたのに、蘇芳に抱かれたいと思いはじめていたのだ。
今にして思えば、この時から既に大瑠璃の心は蘇芳へと傾いていたのだろう。それが間違いだとも気付けずに――。
蘇芳に抱かれたい。知らず知らずのうちに慕情を募らせていく大瑠璃の心で、日に日に強くなる願望。すっかり蘇芳に嵌っていた。
それは蘇芳が大瑠璃の元に通い詰めてから一週間を過ぎた頃のことだ。大瑠璃は自ら身体を開き、蘇芳に床入りを迫った。
一度大瑠璃が迫ると、蘇芳は瞬く間に欲望を露わにした。彼は差し出された柔肌をまるで血に飢えた狼の如く、ただひたすらに貪った。
大瑠璃があれほど嫌だった床入りは、しかし蘇芳との情事は少しも苦ではない。大瑠璃が想像していたよりもずっと心地好く、夜が来る度に恐怖していた頃が嘘のようだった。
その日初めて、大瑠璃は同性に抱かれる悦びを知った。
それ以来、蘇芳は登楼する度に大瑠璃と肌を重ね、大瑠璃もまた彼の熱い吐息を感じて淫らに舞った。
「ぼくの大瑠璃、愛しているよ」
褥の上で大瑠璃を抱きながら、彼は愛を告げる。
そして所作が終われば、強く抱きしめてくれる。
「一緒になろう」
蘇芳は褥の上で夜毎、甘い言葉を囁きかけてくる。
大瑠璃の心は蘇芳への強い想いで満たされていく……。
だから夜な夜な囁きかけてくれる蘇芳の愛を信じて疑いもしなかった。
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