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第七話・裏。(三)

 もう二度と――。  蘇芳の時のようなあんな思い違いをしてはいけない。どうせ間宮だってここに来る目的は他のお客と同じで、性欲処理の相手が欲しいだけなのだ。  心の底から自分を心配してくれる人間などいるわけがない。  大瑠璃は自分自身に言い聞かせ、痛む胸を堪える。  ここから逃げ出したい。  できることなら一人になりたい。  しかし、大瑠璃は所詮、娼妓。身体を開き、お客を迎え入れることが仕事だ。自分は自由にはなれない。 『もう無作法はしない』  今朝、差配人の守谷と約束した以上、それは守らなくてはならない。守谷がいる前では間宮を突き放すこともできないのだ。 「……いえ、なんでもございません。穢らわしい姿をお見せして申し訳ございませんでした」  大瑠璃は頭を下げて謝罪する。 「そういう意味で訊いたのではないんだけどね……」  間宮はう~ん、とひとつ呻ると苦笑した。それきり口を開かなかった。  無愛想な大瑠璃に飽きたのか、彼はまた初会と同様、下座にいる娼妓たちの舞いに加わった。  賑々しい座敷の中、大瑠璃はひとり孤独に煌びやかな演奏と音楽に合わせて舞う娼妓たちの華やかな舞台を遠目で見つめていた。  ――この方がいい。  かまわれるよりずっと……。  《第七話・裏。・完》

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