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第七話・三会目。(二)
常にへらへら笑っている彼は普段からとても遊んでいそうだ。どう見ても大瑠璃ひとりだけに絞って通いつめるなんてできそうにない。
しかも、自分は金糸雀のように心が綺麗な娼妓ではない。お客をヒモとしか考えない穢れた娼妓だ。
そんな自分を選ぶなんてどうかしている。もっとまともな相手を探せばいいのにと、大瑠璃自身でも思ってしまう。
しかし、大瑠璃は娼妓であって彼の家族でも恋人ではない。間宮は自分の行いで名声を損なうだけ。そもそも自分が心配する義理はない。
後先考えずに浮気をする方が悪いのだ。
――そうは思うものの、やはり落ち着かない。
気もそぞろになる大瑠璃を知ってか知らずか、間宮は大瑠璃の馴染みになるための儀式を着々と進めていく。
彼は懐から祝儀袋を取り出し、大瑠璃に手渡した。
祝儀袋を受け取った大瑠璃が中を開けば、小切手が見える。
その間にも間宮は大瑠璃が用意した箸を手に取り、膳に手をつけた。
今、この瞬間をもって、間宮はただのお客ではなく、大瑠璃の馴染みになった。
大瑠璃は彼の名前が書かれた箸紙を取り出し、小切手と一緒に茶箪笥の中に仕舞う。
「――――」
今夜、自分は馴染みになった間宮に抱かれる。
そう思うとなぜだろう。ほんの少し怖いと思うのは――。
大瑠璃はこの花街の娼妓だ。当然何度もお客には抱かれたことがあるし、過去には強姦もされた。慣らされないうちから太く反り上がった楔で無理矢理後孔を打ち込まれたり、身を引き裂かれるような抱かれ方も――ことごとく経験済みだ。
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