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第七話・三会目。(五)

「…………」  それはつまり、彼は大瑠璃を元気付けようとして子猫を連れて来たというのか。 「ほら、昨日泣いていただろう? あの裏会では君たち娼妓の顔を立てなければならない。慰めたくてもそれは野暮ってものだろう?」  彼は大瑠璃の立場を理解した上で、危険を冒してまで今日ここに白猫を連れて来たとそう言う。  郭の掟を破ってしまうなんて、なんという無茶苦茶なお客だろう。  彼は自分勝手すぎる。  他のお客が考えもしないようなことをやってのける。  けれどそれは大瑠璃を思ってのこと――。  たかが娼妓が泣いていたからと、規則を破っていいものではない。  でも、それでも……。  大瑠璃は今、たしかに嬉しいと思っている。  ――心を開けば破滅する。  お客の言葉を鵜呑みにしてはいけない。  頭ではわかっているものの、人懐っこい子猫を見ていると、間宮を否定できなくなってしまう。  猫は本来、とてもデリケートな生き物で警戒心が強いと聞いたことがある。  それなのに、この子猫は初対面に近い大瑠璃の腕の中で丸まり、静かに目をつむっている。  今の今まで鳴き声ひとつ上げなかった。それは何よりも何処よりも彼の懐の中だと安心しきっている証拠だ。  この子猫を見れば誰だって間宮に大切にされているということぐらいは見抜ける。 (……可愛い)  大瑠璃は手を伸ばし、子猫の喉を撫でる。すると子猫は気持ちがいいのだろう。目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。その姿がたまらなく可愛らしい。

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