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第拾話・動揺。(三)
「いい子だね、大瑠璃は……」
薄明かりの閨で、例の如くお客は大瑠璃を組み敷く。一糸も纏わない柔肌を余すことなく舐めまわす、じっとりとした舌の感触が気持ち悪い。
大瑠璃の口を塞ぐその唇は、けっして娼妓を賞賛しない。
ぬくもりを求めて手を伸ばし、後頭部に指を差し入れても、滑らかな金色の波打つ髪はない。
「大瑠璃……会いたかったよ大瑠璃。さあ、私を受け止めておくれ……」
無理矢理身体を開かされ、慣らされてもいないお客を受け入れるための後孔目掛けて楔が穿たれる。
大瑠璃は激痛に耐えるために歯を食いしばる。苦痛の涙を流す。
そして考えるのはただひとつ。間宮のことだった。
――もし、今。自分を組み敷くこのお客が間宮だったならば、彼はまず大瑠璃を満足させてくれるだろう。
そして後ろの窄まりを解し、すっかり緩くなってから挿入してくれるだろう。
大瑠璃を何の感情も抱かない人形のように扱わないだろう。
「相変わらずきついねぇ……お前のここは――」
大瑠璃の中で楔が何度も打ち付けられる。互いの肌がぶつかる卑猥な肉音が打ちのめしてくる。
痛むのは慣らされていないのに挿入された秘部なのか。それとも労りを見せないお客に抱かれる心なのか……。
しかし、どんなに痛いと思っても、自分は所詮、娼妓。同性に抱かれるのは当たり前で、今さら嫌だと口にすることはできない。
果たして今まで、自分はどうやってこれを対応していただろう。
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