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第拾壱話・報い。(三)

 破産し、家族や店も失った。秋山はそれらすべてが大瑠璃のせいだと言うが、秋山は自らの意思でこの花街に通い続けた。懐にある金額を確認せず、財産が尽きるまで通い詰めた秋山が悪い。自業自得だ。――そう意見したいのに、首を締める腕はいっそう力が込められる。これでは呼吸さえもままならない。  大瑠璃は憤怒の形相に変貌した秋山に抵抗しようと彼の手首を掴み、なんとかこの場から逃げられないものかと試みるものの、しかし呼吸を許されない今の自分では彼に太刀打ちする術がない。  酸素を失い、首を絞められる痛みで意識が朦朧としはじめる。  ――自分はこのまま孤独に死んでしまうのか……。  両親に捨てられ、お客にされるがまま玩具として扱われる日々。  幸福さえも知らず、誰にも愛されずに憎悪を向けられ、死を迎える自分――。  これはあんまりだ。  ひどく惨めになる。  涙で視界が滲む。  込み上げてくる涙は涙袋に溜まっていった。  唇を歪めて自分を見下ろす秋山の顔が霞む。 「泣くほど死が怖いか? お前のおかげで破産してから、おれはずっと絶望と向き合っていたよ……」  薄い唇にうっすらと笑みが広がっていく……。  涙をこぼす大瑠璃を、秋山は愉快そうに笑った。  ――違う。大瑠璃が涙するのは、けっして死が怖いからではない。  身体はずいぶん汚れてしまったけれど、それでも家族に代わって借金の肩代わりをするため、死んだつもりで生きてきた。だから今さら死なんて怖くない。  この涙は身を粉にして懸命に働く自分がけっして報われないという、悲しみの涙だ。

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