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第拾壱話・報い。(五)

 すっかり捻くれてしまった大瑠璃に、間宮はひだまりのようなあたたかな笑顔を向けてくれた。美しいと言ってくれた。  たとえそれが、上辺だけの褥での戯れ言だったとしても、それでも嬉しかった。  今、今日という日に自分の一生が終えるというのならば、最後にもう一度、穏やかに微笑む間宮が見たい。格下の、たかが娼妓の意見に耳を貸し、捨て猫を飼うことにした優しい間宮に会いたい。 「……てる、あき、さま……」 (会いたい)  大瑠璃は手を伸ばし、ぬくもりを求めた。  けれども大瑠璃にはぬくもりは与えられないことくらいは知っている。  だけど、それでも――。 「て、る……あき……さまっ」 (会いたい)  彼の名を必死に呼んでも、声が掠れて思うように出せない。こんな小さく掠れた声で呼んだって誰にも届くはずがない。 「さっさとくたばれ!!」  秋山の殺意が大瑠璃を苦しめる。  永遠に助けは来ない。  それは両親に捨てられた時から、もうすでに知っている。  わかってはいるものの、それでも大瑠璃の心がひどく痛む。  やがて意識が薄れていく……。  伸ばした手はとうとう力尽き、ゆっくりと褥に落ちた。  大瑠璃が死を受け入れた、直後だった――。 「お客様、困ります、今は!!」  大瑠璃は薄れゆく意識の中で、近づいてくる複数の足音とドアが開く音を聞いた。すると首を絞めつけていた手と、自分の身体に跨っていた秋山の重みが一瞬にして消えた。

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