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第拾壱話・報い。(六)
詰まっていた喉から空気が送り込まれる。
一度に大量の空気が送り込まれたことで肺に負担がかかってしまう。大瑠璃は大きく咳き込んだ。
いらないと言われたことが悲しい。
咳き込むばかりの無様な自分が情けなくてひどく惨めだ。
大瑠璃は涙を流しながら身体を丸めた。
口からは嗚咽混じりの咳が飛び出すばかりだ。
「大瑠璃、もう大丈夫だ」
誰だろう。背中を擦ってくれている。
それと、心配そうに自分を呼ぶ男の声も――。
「よかった……無事か」
うつ伏せて咳き込む大瑠璃の背中を摩る手のおかげで少し楽になった。閉ざしていた目をそっと開く。
すると見えたのは、波打つ金色の髪と、均衡のとれた顔立ちをした――間宮だ。
「嫌な予感がしたから登楼してみたが、正解だったな」
大瑠璃の身体が、たくましい腕に抱きしめらる。
薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。
この力強い腕も――薔薇の香りも知っている。
「てる……あき、さま?」
(来てくれたの?)
本当に――?
大瑠璃は恐る恐る手を伸ばし、自分の想像だけではないことを確かめるため、広い背中にそっと指を這わせた。
間宮は不思議な人だ。絶望の中にいた大瑠璃をこうやって簡単に救い出してくれる。今までに与えられたことのない陽だまりの中に連れて行ってくれる。
(輝晃さま……)
彼に身体を預けると、心音が聞こえた。ほんの少し鼓動が速いのは気のせいだろうか。
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