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第拾弐話・こひごころ。(六)

「僕は大瑠璃を気に入っている。この子を抱くのはお客である僕だ。そして傷つけられたこの子の身体を抱くのも僕だろう?」 「それは――」 「だったらこうしよう。秋山の分の登楼代と、今日一日僕が登楼する御勤め代を支払おう。そして今後一切、大瑠璃には無理に高額な御勤め品を強請らないよう言って聞かせる。それでどうだい?」 「しかし!」  尚も反論する守谷に、間宮は意見を変えない。 「いいね?」  彼はもう一度、守谷に言って聞かせた。 「……はい。かしこまりました」  間宮は守谷の反論を許さなかった。守谷は渋々頷くと、大瑠璃と向き合い、もう二度とこのような事態を引き起こさないよう言ってから腰を上げ、部屋から出て行った。  守谷はここ花街では差配人を勤めている上役である。彼に意見できるのは花街ではただひとり、楼主だけだ。  それなのに、間宮は楼主と同じような威厳をもった力強い返答で守谷を困らせた。その光景を見ただけで、間宮という人物がいかに優れた気質をもっているのかがわかる。  上に立つ者の器だ。  彼は紛れもなく大店の主としての威厳がある。  そして自分は――ただの娼妓。間宮に買われた玩具にすぎない。 「――――」  大店の主になるだろう彼は大瑠璃を抱きたがっている。  間宮は自分の身体を気に入っている。  彼が優しくするのもすべては大瑠璃を抱きたいがため――。  ただそれだけにすぎない。  大瑠璃は無言で褥に上がると、帯を解きはじめる。

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