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第拾参話・想い隠して。(五)

 大瑠璃だってできることなら、一分でも一秒でも長く間宮と一緒にいたいと願っている。  けれども自分は単なる娼妓。けっして立場を見失ってはいけない。蘇芳の時のように、身の程をわきまえずに振る舞ってはいけない。それは間宮を想っているのなら尚のことだ。 「だけど俺は……」 「大瑠璃、僕は君と食事がしたいんだ。それはいけないことかな?」 「そんな……ことは……」  ――ない。と、そう言いたいのに、言えない自分が悔しい。どんなに美しく着飾ったところで所詮は身の置き場所が違う。間宮とは対等にはなれない。  恋心を秘めた胸が痛む。 『迷惑です』 (言わないと――)  本心ではない言葉を紡ぐことができず、大瑠璃は首を振って告げた。  間宮から離れようと、分厚い胸板を押す。  胸が痛い。  苦しくて息ができない。 「大瑠璃?」  すると頭上から影が落ちてくる。間宮が大瑠璃の表情をたしかめようと覗き込んでくる。 (お願いだから、俺を見ないで――)  瞼が熱い。目に涙が溜まりはじめている。大瑠璃はただ俯き、唇を噛み締めた。  間宮は立場の違いに気付き、直ちに思い直すべきだ。こんな見窄らしい娼妓と食事なんてせっかくの朝食も不味くなってしまう。 「俺は郭にいる。お一人でどうぞ。心置きなく食べてきて――」  やっとのことでそう言った声は震えている。  自分の身の程を有り有りと思い知った大瑠璃の心は打ちひしがれた。  彼は大瑠璃を置いて閨を出て行くだろう。  そう思っていたのに、間宮はどこまでも大瑠璃の思考を裏切る。

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