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第拾参話・想い隠して。(六)
「大瑠璃……昨日の今日で塞ぎがちになっているね。こんな狭いところにいてはダメだ。さあ、いざ僕と一緒にお天道様の光を浴びよう!」
間宮はそう言うと――。
「へ? うわわっ!!」
華奢な身体は突如として宙に浮いた。
驚いたことに、たくましい彼の腕によって横抱きにされたのだ。
「ちょっ、ちょっと、輝晃さま!? これ、昨日の夜見世の格好のままっ!!」
間宮の食事を用意するため急いで纏った着物は金糸で縫われている。これは日中、外に出るには少々派手だ。それに何より、自分は今、帯をしていない。派手な着物の間からは緋色の長襦袢が見えるばかりだ。
「大丈夫、大丈夫。君はどんな格好をしていても美しいよ。まあ、一糸も纏わない姿の方がずっと美しいけれどね」
「ぬあっ!?」
朝っぱらから破廉恥なことを言うのはいったいどの口なのか。大瑠璃は高笑いをする間宮に動揺を隠せない。
大瑠璃は今さらながらに間宮がマイペースな人柄だったことを思い出した。
そうはいっても、そんな強引な間宮にも惚れているのも事実だ。
『ありのままでいい』
まるでそう言ってくれているようで、彼の言動ひとつひとつが大瑠璃の胸を熱くする。
(どうしよう、すごく嬉しい)
瞼に熱が帯びる。
込み上げてくる涙のおかげで、大瑠璃はそれ以上何も言えなくなった。だから大瑠璃は、彼への返事の代わりに両手を間宮の首に巻きつけ、身を委ねるのだった。
《第拾参話・想い隠して。・完》
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