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第拾伍話・戯れごと。(三)

 彼女は大瑠璃がお客と一緒にいると、決まってしゃしゃり出てくる。とにかく大瑠璃に嫌みったらしい態度ばかりを取る遊女だった。  蔓は、『借金を作らせてまで貢がせる』『過去にお客を自殺にまで追い込ませたことがある』などと、彼女は大瑠璃の悪い噂を引き合いに出し、さらには噂立った内容に誤解を招くような発言をして大瑠璃のお客を取るのだ。  今まで、何人のお客がそうやって蔓へ乗り換えただろう。  ――また因縁をつけられる。  大瑠璃の浮上していた心は予期せぬ登場人物によって簡単に転落する。しかも今回、彼女の標的となったのは大瑠璃が密かに想い慕う間宮だ。このままでは間宮さえも蔓に取られてしまう。  大瑠璃の胃がきりきりと痛みはじめる。 「あんさん、今回はえらく羽振りがいいお客を捕まえたんどすなあ」  間宮と大瑠璃を一瞥(いちべつ)した蔓は、紅を引いたふっくらとした唇を小さなその手で覆い、大瑠璃を小馬鹿にするような口調で言ってのけた。  ――後ろにいる付き人たちも蔓と同じようにクスクスと笑っている。  彼女たちの笑みが嫌みったらしい。 「気ぃつけなはれ、大瑠璃は巾着の紐がゆるい殿方の懐を狙いますさかいなあ」  横目で大瑠璃を捉えた蔓は、間宮に歩み寄った。  彼女の言うことは間違いではない。だから大瑠璃には何も言い返すことができない。  ただただ唇を噛みしめ、膝の上で握った拳を見つめる。 「まあ、ええ男やないの。大瑠璃にはもったいないわあ」

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