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第拾六話・やがて終わりを告げる関係を今だけは……。(六)
心が欲しいなんて思ってはいけない。
卑しい自分にその権利はない。
大瑠璃は込み上げてくる悲しみを堪え、への字に曲がりそうになる唇をどうにか笑みに変える。
「ほんとう? 嬉しい……」
(ダメだ。これ以上笑えない)
切ない恋心に堪えきれなくなった大瑠璃は真意を悟られないよう、ふたたび自らの唇を押しつけた。すると間宮の熱を持つ舌が口内に侵入する。
どんなに願っても間宮の心は手に入らない。
ならば今だけでも溺れてしまおう。
大瑠璃は与えられる深い口づけと後孔を穿つ熱い楔に集中する。
「んっ、う……」
(輝晃さま、愛しています)
大瑠璃は間宮から与えられる快楽を夢中で貪った。
――その日から、間宮は昼見世から夜見世まで連続して登楼する日が続いた。
手を伸ばしてもけっして届かないと思っていた太陽は今、大瑠璃の手元にある。
そして今、間宮は大瑠璃を膝枕にしてうつらうつらとしていた。
――相変わらず間宮は綺麗だ。
太陽の光で反射するゆるやかに波打つ金色の髪。
間宮の綺麗な髪へとそっと手を伸ばす。
優しい肌触りに、つい唇が弛んでしまう。
象牙色の肌さえも日光に照らされ、輝いているようだ。
彼の前では太陽の光さえも色褪せてしまう。
(綺麗……)
大瑠璃は間宮をうっとりと眺める。
「君はそういうふうに微笑むんだね。美しい大瑠璃……」
「うわっ! 輝晃さま、起きていらしたの?」
てっきり眠っていたと思っていた彼から唐突に話しかけられ、大瑠璃の心臓が大きく跳ねた。
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