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第拾六話・やがて終わりを告げる関係を今だけは……。(九)
それに、美しい彼のことだ。恋人だっているだろう。どう考えても自分が入れる隙はない。
間宮を想いすぎた胸が痛い。
苦しい。
――それでも……。
今だけでいい。
この一瞬でも間宮の心が自分にあると思いたい。
「本当? 嬉しい……」
大瑠璃は泣きたくなる気持ちを押し込め、広い背中に腕を回した。
彼の心臓の鼓動と息遣いを聞く。
永遠に続くことを願う。
けれども間宮との関係はそれほど長く続かないことを本人が一番よくわかっている。
それでも、大瑠璃はやがてやって来る別れをただひたすらに拒絶した。
《第拾六話・やがて終わりを告げるこの関係を今だけは……。・完》
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