122 / 153

第拾八話・貴方のためなら死さえも厭わない。(八)

「てる、あきさま」  間宮の顔を見ただけで、強張っていた身体から力が抜けていく……。  ――来てくれた。  彼は来てくれた。 「てるあき、さま……っひ……」  大瑠璃は間宮の広い背中に腕を回し、縋った。 「よしよし、怖かったね。もう大丈夫だよ」  後頭部を撫でてくれる手つきが優しくて、大瑠璃は涙を流す。  力強い腕に縋りつく。 「大丈夫、大丈夫だ」  何度もそう言って抱きしめてくれる。  彼はやはり蘇芳とは違う。  本当に心優しい男性だ。  ほんの少しの間だけれど泣いたおかげで恐怖心が解かれた。冷静さを取り戻しつつあった大瑠璃は間宮の肩越しから花鶏の姿を見た。彼はどうやら無事のようだ。やって来た刑事によってそっと外へ促されていた。  ――よかった。  皆無事だ。  大瑠璃は詰めていた息を吐く。しかし間宮に抱きしめられて安心できたのはそこまでだった。 「間宮刑事、狙い通りでしたね」  間宮に声を掛けた新たな侵入者によって、大瑠璃は打ちひしがれた。  声の方を見れば、細身の男を取り押さえたスーツ姿の男がいた。 『刑事』  彼はたしかにそう言った。  大瑠璃は考えもしなかった事実に驚いた。目の前で繰り広げられる会話をただ呆然と聞くばかりだ。 「俺たちの読み通りだったな。やはりこいつら、この近辺を住処にして売買してやがった。ここは金持ちがよく出入りする。こいつにとっては格好の場所だったんだろうな」  この張りがある声は知っている。金糸雀の馴染み、栄だ。  声がする方を振り返れば、でっぷりとした恰幅のいい男を取り押さえた栄がいた。

ともだちにシェアしよう!