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第拾八話・貴方のためなら死さえも厭わない。(九)

 ――それでは、栄も警察の人間なのか。  だとすれば、栄や間宮が花街に通った理由は自分や金糸雀が目的だったのではなく、あの麻薬密売人を捕まえるためだったというのか。  ならばそもそも大瑠璃と出会うきっかけになった初会を迎える昼間に子猫と遊んでいたのも怪しまれないように張り込みをしていたからなのかもしれない。  二人はもともと吉原に登楼する目的のお客ではなかったということになる。  栄が金糸雀のお客になったのも、すべては金糸雀がここの御職だからで……。  おそらく、彼ら密売人が金糸雀や大瑠璃のような美妓を買い求めると思ったからこそだったのだ。  だからだ。間宮と栄は人気の娼妓を寄越せと楼主に掛け合ったのは――。  そして彼らは麻薬の密売人だろう人間に目星をつけ、毎日のように大瑠璃と金糸雀の元へ登楼を果たした。  なるほど、ならば家庭も築けない忙しい身の上だと言った間宮の言葉も、不規則な登楼も頷ける。  すべては彼らが刑事だからこそだったのだ。  そうでなければ、誰が大瑠璃のような愚かな娼妓に貢ぐだろう。  (かずら)に言い寄られてなびかなかったのも、大瑠璃への巨額な登楼代も、刑事という職業を全うするためのもの。  間宮はけっして大瑠璃を気に入っているわけではなく、仕事柄、泣く泣く大瑠璃の馴染みになったのだ。  すべての疑問は今、解消された。  ――ああ、自分はなんと愚かだったのだろうか。  連続しての昼夜問わずの登楼で少しは自分の身体が気に入られたのではないかと勘違いするなんて……。

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