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第拾八話・貴方のためなら死さえも厭わない。(十)
大瑠璃の胸が張り裂けそうに痛む。
大瑠璃はもう、間宮の腕に包まれてもあたたかな気持ちにはなれなかった。それだけ、自分は間宮を強く想ってしまったのだ。
「大瑠璃? どこか痛むかい?」
痛みなんてあるに決まっている。
間宮を想う胸が痛い……。
涙を流さないよう、唇を噛みしめて項垂れる。
大瑠璃の様子がおかしいと感じたのだろう、間宮が訊ねてきた。
その優しささえも、打ちひしがれた今となっては煩わしいばかりだ。
自分を利用するだけの目的なら、初めから優しい言葉のひとつも掛けないでほしかった。
そうすれば、間宮に恋心を抱くこともなかったのに……。
痛い。
苦しい。
間宮を一途に想っている心が悲鳴を上げる。
「くっそ!! こうなったら一人だけでも道連れに、あの世に送ってやるっ!!」
胸に絶望を抱いた大瑠璃は間宮を拒絶するため、顔を上げた――直後だった。
細身の男が動いたのを見た。
男は身体を反転させると自分を取り抑えていた刑事を振りほどき、あろうことか懐から拳銃を取り出したではないか。
彼は背を向けている間宮に銃口の照準を合わせている。
間宮の背中越しで銃口が鈍く光る。
間宮が殺される。
大瑠璃は咄嗟に間宮の腕から抜け出した。
「輝晃さまっ!」
間宮の前に立つと両手を広げ、銃口の的になる。その途端、耳をつんざく大きな銃声音が周囲に響き渡った。――同時に大瑠璃の胸を焼けるほどの強烈な激痛が走る。
激痛に貫かれた大瑠璃の視界が歪む。
力なくその場に倒れ込んだ。
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