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第拾九話・叶わない恋。(四)

 二人の仲が揺るぎないものだと感じた大瑠璃は、勝ち目がないことを思い知る。目頭が熱くなる。  胸が引き裂かれるように痛み出す。  ――自分はただの厄介者。娼妓を囲うなどという愚かな考えは今すぐ止めるべきだ。  自分がいては、彼女は気が気ではないだろう。――いや、彼女との仲が余裕だからこそ、自分を身請けしたのかもしれない。『大瑠璃がいても二人の絆は深いところで繋がっている』と、そういう核心があるに違いない。  自分はきっとこの傷が癒えた後、しかるべき場所に出されるだろう。  なにせ大瑠璃の身の上に同情しているだけの間宮は簡単に手放すことができるだろうから……。  だって、間宮が大瑠璃の元に登楼を果たしたのも、大瑠璃を抱いたのも、すべては仕事の都合上、仕方なく、だ。  大瑠璃に対する間宮の感情は何も無い。  褥で繰り出された、『愛している』なんて言葉はやはり偽りだった。愛の告白はただの戯れ言にすぎなかったのだ。  自分はなんて馬鹿なのだろう。  間宮の告白はその場の戯れ言にすぎないと散々言い聞かせていたのにもかかわらず、それでももしかしたらと心の片隅でどこか期待してもいた。そんな浅はかな自分が恨めしい。 「……ほんとうに馬鹿」  心が苦しい。張り裂けそうに痛む。  そしてとうとう大瑠璃の目からは涙が流れ落ちた。  大瑠璃の傍にいた子猫は、「にゃあ」とひと鳴きするとドアの隙間から出て行った。  ……こうやって、誰も彼もが自分の元から離れていくのだ。

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