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第拾九話・叶わない恋。(五)

 血の繋がった両親にさえも捨てられた自分は所詮、一人きり。  そう思い知らされればいっそう胸が痛む。  大瑠璃は泣き声を漏らさないよう、きつく唇を引き結ぶ。それから今度こそ撃ち抜かれた胸の傷が疼かないよう、そっと起き上がった。 「大瑠璃、良かった。目が覚めたんだって? 気分はどうだい?」  俯く大瑠璃の頭上から、今ではすっかり聞き慣れてしまった低声が聞こえる。大瑠璃は乱暴に腕で涙を拭き取り、子猫を抱えている間宮を見上げた。  好きな人に見向きもされない。気分なんていつでも最悪に決まっている。  大瑠璃は無言のまま、夜具から抜け出した。  間宮を想っているこの胸の内も――。  拳銃で撃たれた傷も――。  どこもかしこもが痛い。 「大瑠璃? どこへ行くの?」  間宮は、銃に撃たれた傷の痛みでおぼつかない足取りのまま立ち上がった大瑠璃を呼び止めた。 「――帰る」 「帰るってどこへだい?」  大瑠璃の返事に、またもや間宮は(たず)ねてきた。  どこへ行くかはもう決まっている。心も身体も穢れきった自分がいるべき場所はただひとつ。 「花街。俺が居るべきところ」  自分はすっかり穢れている。汚らしい自分の居場所はもう、そこしかない。  花街こそが自分の居るべき場所だ。  穢らわしい自分には精々あそこがお似合いだ。 「待って大瑠璃! 花街に行きたいのなら後でうんと連れて行ってあげるから――その格好で、しかも傷を負っている状態で出歩くのはあまりにも危険だ」  間宮は薄手の長襦袢を身に纏っただけの大瑠璃に慌ててそう言うと、抱えていた猫を下ろして行く手を阻んだ。

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