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第拾九話・叶わない恋。(八)
「いや……も、やめて……」
「君は襲われるのが好きなんだろう?」
「……っつ!」
――違う。
こんなふうに抱かれることを望んでなんかいない。想い想われ、好いた人と褥を共にしたい。けれども自分は卑しい娼妓で、大瑠璃が恋する間宮は尊い身分の人だ。
どうやっても釣り合いが取れない。
……それに彼は自分との関係を望んでいない。間宮が欲しているのは快楽に敏感なこの厭らしい身体だけ――。
どう考えたって、ただの娼妓に情愛なんてない。
「っひ、ぅっ!」
大瑠璃が拒絶しても間宮の手は止まらない。大瑠璃を扱く指は爪を立てて刺激を与えてくる。
「いやっ、もう、俺に触らなっ! やあっ!!」
恋人を目の前にして、自分を組み敷くなんて酷すぎる。
苦しい。
悲しい。
拭ったばかりの涙がまたじんわりと浮き出てくる。
「大瑠璃……」
好いた男性に玩具のごとく組み敷かれる大瑠璃の方がずっと苦しいのに、なぜだろう。耳元で自分の名を呼ぶ低い声の方がとても苦しそうに聞こえるのは……。
間宮の声音が耳孔に伝わり、大瑠璃を煽る。
けれどこれに屈してはいけない。
大瑠璃は必死に頭を振り、差し出される快楽を拒絶した。
しかし身体は正直だ。与えられる刺激に耐えられるはずもなく、蜜が流れて間宮の指を濡らす。彼の指が動くたび、水音が立ち、大瑠璃を責め立てる。
「んっ、やっ!! 恋人の前でも娼妓は抱けるって、大人の余裕のつもり? こんな、ああっ……」
大瑠璃の気持ちを無視して抱こうとする彼は酷すぎる。
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