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第拾九話・叶わない恋。(十)

「ちょっと待って大瑠璃ちゃん、誰が誰の恋人だって言ったの?」  女性はいつの間に現れたのか。悲しみに打ちひしがれる中、間宮の言葉を遮って聞こえたのは女性特有の甲高い声だった。  女性の問いに、大瑠璃はほぼ反射的に顔を覆っていたその手を外した。涙で潤みきった目を向ける。  彼女はいったい何を言っているのだろう。誰が間宮の恋人だと訊ねられても今さらだ。 「私、こいつの彼女じゃないわよ?」  絶望が大瑠璃を襲う中――。  けれども彼女の意外な言葉に、大瑠璃の思考が止まった。 「――へ?」  彼女が間宮の恋人ではないとはどういうことだろう。今さらそんな嘘をいったい誰が信じるというのか。  大瑠璃の眉根に深い皺が刻み込まれる。  けれども彼女もまた、大瑠璃に負けず劣らず眉間に深い皺を刻んでいた。  彼女は肩を怒らせ不機嫌そうに眉尻を上げている。間宮の恋人だと言われて腹を立てているように見える……。  大瑠璃は女性の反応に戸惑いを隠せない。  静かに唇を開いた。 「えっ? 違う……の?」  訊ねる声は動揺し、掠れている。 「コレ、弟よ?」 「えっ?」  女性から告げられた事実に、大瑠璃は耳を疑った。 「おと、うと?」  大瑠璃が反芻する。 「――ああ、大瑠璃。僕に恋人はいないよ。もちろん、君以外にはっていう意味だけどね」  間宮も迷惑そうに首を振っている。 「えっ? でも、だって……彼女。輝晃さまのことを名前で呼んで……」  たしかに、この女性は親しみをもって間宮のことを、『輝晃』と呼んだ。

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