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第拾九話・叶わない恋。(十三)
「大瑠璃ちゃん、それは大丈夫よ。見世は私が継ぐから」
「へ?」
一緒にはなれないと話す大瑠璃に、しかしはっきりとした口調で言い切ったのは間宮の姉だった。店は自分が継ぐとそう言う彼女はとても男勝りのようだ。
「大瑠璃に話したかな……。間宮家は少しは名の知れた宮中御用達の反物屋でね。だけど僕には経営っていうものがどうにも苦手で……今の刑事の仕事が性に合っているんだ。だから独り身でも問題ない。それに実のところ、君さえ傍にいてくれれば、僕の身の振り方なんてどうだっていいんだよ」
「なっ!!」
――自分の身の振り方なんてどうでもいい。
この男性は何という恐ろしいことを言ってのけるのだろう。間宮は尊い男性で、大瑠璃が愛した唯一の人だ。できることならずっと太陽に愛されたまま幸福でいてほしい。
自分の立場もわきまえず平然と言ってのける間宮に、大瑠璃が言い返そうと口を開けば――けれどもすぐに間宮の言葉に飲まれてしまう。
「ねぇ、大瑠璃。僕は本気だよ。ほら、僕はこんな美しい身なりだし、金だって充分持っている。だから女性に言い寄ってこられるのは当たり前で、他人からは何をするにしても褒められてばかりなんだ」
たとえ真実を口にしていてもそれを自分の口から言うのはいかがなものか。
自信に満ちた彼は自分を疑わない。
自信過剰な発言でさえ、惹かれてしまう。そして間宮は尚も続ける。
「飼う気もないのに優しくするな!」
「――――」
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