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第拾九話・叶わない恋。(十四)

 顎を突き出し、そう言ったあと、間宮はにっこりと微笑んだ。 「僕をぴしゃりと叱りつけたのは、後にも先にも君が初めてなんだよ。それがとても新鮮でね。君のことをもっと知りたいと思った。大瑠璃、僕は子猫さえも思いやる優しい心根を持つ君が愛おしい」  ――違う。  自分はそんなに気の良い人間ではない。  大瑠璃はただ、お客にされている仕打ちの憂さ晴らしに当てつけただけだ。  間宮は物事を美化する癖がある。大瑠璃が間宮に対して怒鳴ったのは、間宮も他のお客たち同様、自分たち娼妓を物のように扱う自分勝手な人間だと思ったからだ。  大瑠璃にあったのは逆恨みだ。だから大瑠璃はけっして間宮が言うような綺麗な理由で怒っていたわけではない。 「違――」  大瑠璃が否定しようと口を開くと、間宮は人差し指を大瑠璃の唇に当てた。 「仕事の都合上、一時的に登楼できなくなった時、実感したのは、逢えない君の事ばかり考えていたということだ。――それから君が馴染みの客に首を絞められている場面を目にしたあの時、彼から君を守れたことに誇りを感じたし、失いたくないと切に思った。それだけじゃない。僕とは違う誰かに抱かれている君の姿を想像するだけで、はらわたが煮えくりかえるほど怒りを感じたし、早く君を抱きたくて仕方がなかった。――ねぇ、大瑠璃。愛しているんだ。頼むから、頷いてくれないか? 僕の傍にいてほしい」 「……っつ!」  これは嘘かもしれない。蘇芳の時のような、あんな想いはもうたくさんだ。

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