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第拾九話・叶わない恋。(十五)
……そう思うのに。
大瑠璃はまた他人を信じようとしている。
――いや違う。相手が間宮だから信じるのだ。
「俺は娼妓だ。俺を囲えば世間から白い目で見られる」
「言っただろう? 世間体なんて別にかまわないと――。僕の傍にいてくれるのは君でなければ意味がない。君しかいらない」
間宮はそれが真実だとでも言うように、大瑠璃の額に唇を落とした。
リップ音が静かな部屋の中に響く。
「君が僕を庇って撃たれた時、どんなに辛かったか。僕がこんな生業じゃなかったら君は傷つかずに済んだものをと、刑事という職業をあれほど憎んだことはなかったよ。もう、君を失いそうになるのはご免だ」
「大瑠璃ちゃん、輝晃は自分の言葉には責任を持つ子よ。絶対に貴方を捨てないわ。それは姉の私が保証する。だけどそうねぇ。もし、万が一にでも大瑠璃ちゃんを悲しませるようなことがあれば、私がコイツを締め上げてやるわ!」
やはり姉弟だからだろう。間宮と同じように、にっこり微笑む彼女の顔は、けれどもどこか怖い。
「恐ろしい姉を持ってしまった……」
彼女の姉としての意見に間宮はわざとらしく身震いすると苦笑を漏らしながら、静かに頷いた。
――ああ、間宮の言葉は真実なのかもしれない。
「……っつ!」
間宮の傍にいてもいい。
そう実感すると、瞼が熱を持つ。ふたたび視界が潤みはじめた。
「てる、あきさま……俺は……貴方が好きです。諦めなきゃって自分に散々言い聞かせて、でも諦めきれなくて……どうしよう。こんなの、夢みたい……」
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