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最終話・ずっとお傍に――。(五)
彼は大瑠璃が体験した出来事を、まるで自分が体験したことのように怒り、胸を痛めてくれる。
だからこそ、大瑠璃は間宮を愛したのだ。彼を知れば知るほど、慕情は増すばかりだ。
「大瑠璃、僕なら君をそんな目に遭わせない。ねぇ、大瑠璃。美しい僕と美しい君。僕らはとても釣り合うと思うんだ。――まあ、君はもう僕の虜になったことだろうし、逃げられないけれどね」
(輝晃さま……)
ものすごく素敵な告白は、しかし自分を褒め称える彼自身の言葉で台無しだ。
間宮はどんな時でも間宮だ。相変わらず自信たっぷりな物言いに、思わず苦笑してしまう。
「……自信過剰」
大瑠璃が間宮の肩口でぼそりと呟けば、にやりと笑うような気配を感じた。
「本当のことだからね、仕方がない」
間宮はそこまで言うと、大瑠璃を押し倒した。大瑠璃の身体が反転し、開いた共襟から彼の手が忍び込む。
「傷口が痛むようなら言って。なんとか加減するから」
耳元で告げられた言葉は大瑠璃の耳孔を通り、熱を灯す。彼の言葉の意味はもう知っている。自分は今から彼に抱かれるのだ。
心を寄せている彼に抱かれるのは大瑠璃だって本望だ。強く愛してほしいとも思う。
しかし大瑠璃の隣には子猫がいる。このまま間宮に抱かれれば、子猫が起きてしまうのではないか。
我に返った大瑠璃は分厚い胸板を押した。
「あっ、ちょっと待って。子猫が……」
せめて子猫がもう少し寝静まった頃に抱いてほしい。大瑠璃が小さく首を振ると、彼はにっこりと微笑んで見せた。
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