147 / 153

最終話・ずっとお傍に――。(五)

 彼は大瑠璃が体験した出来事を、まるで自分が体験したことのように怒り、胸を痛めてくれる。  だからこそ、大瑠璃は間宮を愛したのだ。彼を知れば知るほど、慕情は増すばかりだ。 「大瑠璃、僕なら君をそんな目に遭わせない。ねぇ、大瑠璃。美しい僕と美しい君。僕らはとても釣り合うと思うんだ。――まあ、君はもう僕の虜になったことだろうし、逃げられないけれどね」 (輝晃さま……)  ものすごく素敵な告白は、しかし自分を褒め称える彼自身の言葉で台無しだ。  間宮はどんな時でも間宮だ。相変わらず自信たっぷりな物言いに、思わず苦笑してしまう。 「……自信過剰」  大瑠璃が間宮の肩口でぼそりと呟けば、にやりと笑うような気配を感じた。 「本当のことだからね、仕方がない」  間宮はそこまで言うと、大瑠璃を押し倒した。大瑠璃の身体が反転し、開いた共襟から彼の手が忍び込む。 「傷口が痛むようなら言って。なんとか加減するから」  耳元で告げられた言葉は大瑠璃の耳孔を通り、熱を灯す。彼の言葉の意味はもう知っている。自分は今から彼に抱かれるのだ。  心を寄せている彼に抱かれるのは大瑠璃だって本望だ。強く愛してほしいとも思う。  しかし大瑠璃の隣には子猫がいる。このまま間宮に抱かれれば、子猫が起きてしまうのではないか。  我に返った大瑠璃は分厚い胸板を押した。 「あっ、ちょっと待って。子猫が……」  せめて子猫がもう少し寝静まった頃に抱いてほしい。大瑠璃が小さく首を振ると、彼はにっこりと微笑んで見せた。

ともだちにシェアしよう!