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第6話
囚われの身となってからこっち、スマートフォン等の一切の情報から切り離されている状態は、現代人にとっては恐怖だ。
一応、窓はある。
ただし、それは〝檻〟の外側にある。そのうえ遮光カーテンが閉め切られているために、陽が昇り、陽が沈むさまから時間の経過を推し量ることはできない。
照明の明度を切り替えることによって人工の昼と夜が訪れるここは、いわば豪奢な独房。
そういった感がある〝檻〟の四方の壁は、天井まで届くガラス製のパーテイションで仕切られている。
出入り口の開閉は、佑也が看守と呼んで忌み嫌う男のみが行なう。
つまり、二十畳大の洋室の内側に設けられたこの〝檻〟は、サイコロの中にそれよりひと回り小さなサイコロが収まっているような入れ子の構造だ。
したがって正確な日時は定かではないが、たぶん、それは十日ほど前の出来事だ。
男=看守に玩弄された。いや、玩弄されたなどという生やさしいものじゃない。肉体と精神 をまとめて蹂躙された。
ベッドにくくりつけられて、いきり立った陽根を後ろにねじ込まれた。
自分のそれとは別の意思を持つものが内 を行き来する感覚にのたうち回ったあの一件は、まさに悪夢のような出来事だった。
獣欲の餌食にされている間中、生き地獄を味わい、いっそ殺してくれと泣きわめいた。ただし厳密にいえば、もはや純然たる被害者とは言えない。
内を執拗にかき混ぜられて達した時点で、好むと好まざるとにかかわらず共犯者になり下がった。
凌虐を加えられた日を境にして、心の一部が壊れたように思う。しとどに内にそそぎ込まれた熱液は、細胞にじわじわと浸透していく気がする。
〝橘怜門〟という毒素が全身に回り、心も躰も蝕 まれていくようだ。
よしんばこの将来 、脱獄に成功して橘という軛 から逃れても、性奴に堕とされた記憶をぬぐい去るのは難しい。
たとえ一旦は封印しえたとしても、あの呪わしい記憶はきっと癌細胞のように増殖をつづけ、いずれは不治の病と化すのだろう。
友だちとしゃべっている最中も、講義を受けているさなかも、事あるごとにフラッシュバックに襲われて未来永劫、苛まれるにちがいない。
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