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第12話
その場面を橘に目撃されたら、ただではすまない。きっと、死んだほうがマシという目に遭わされる。
レイプに類するやり方で折檻されて、また、なりふりかまわず泣き叫ぶことになるのがオチだ。
橘がドア口に姿を現わした。テンキーに暗証番号を打ち込むと、専用の装置に声紋を読み取らせる。
〝檻〟の側の扉が開いた。ステッキを軽やかに操りながら、橘が敷居を跨いだ。
はしたないことに、萎えるどころかペニスははち切れそうだ。それを橘に見とがめられる寸前、ブランケットをかぶりおおせた。
「これは、これは。銀幕のスターから牢番へと華麗なる転身を遂げられ橘怜門さま自ら、かようなむさ苦しい場所に足を運んでくださるとは恐悦至極に存じます。生憎とおれは囚われの身。不調法ものゆえ、茶菓の用意がございません。さっさと、失せな」
と、皮肉たっぷりにまくしたてたものの、呼吸が乱れて声は不様にうわずる。佑也は手足を縮こめた。その拍子に茎が跳ねて、蜜を降りこぼした。
甘だるいものが、下腹部に満ち充ちる。
淫液がぐつぐつと煮え立ち、宝玉がせり上がる。
少しでも気を抜けば、よがり声が口を衝いてほとばしる。佑也は唇を嚙みしめた。いいところだったのに、と内奥が不満げにさざめき、指を誘いこみたがっているように陰門がむずむずする。
よりによって、もう少しで射精すとこに押しかけてきた橘が恨めしい。
早く……っ! 心の中で叫ぶ。橘を追っぱらいしだい、さっきの続きを存分に愉しもう。
出ていけよがしに、ぷいと背中を向けた。近寄るな、というバリアを張り巡らしてケンもホロロに橘をあしらう。ところが。
「行儀が悪い。人に話しかけられたときは相手の目を見て受け答えする。それがマナーの基本だ。起きて、これを読みなさい」
枕元に置かれたものに、ちらりと一瞥をくれた。
佑也は表題に〝如月荘奇譚〟とある紙の束をはたき落とすと、淫らなエキスでぬらぬらする指をシーツでぬぐった。そそくさとブランケットにもぐり込んだ。
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