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第13話

「こんな屁の役にも立たない物は、いらない。何かくれる気があるならボクサーショーツの一枚もよこせ」 「人の労作を摑まえて無用の長物とは、ご挨拶だな。大方、自瀆に励んだ結果、いかがわしい汁で手が汚れ、そのために直接、受け取るのは気がひける──(あた)らずといえども遠からずといったところか」 「なっ、わけないだろ……! 強姦魔のあんたじゃあるまいし、人を色情狂呼ばわりするな!」 「やましいところがあればあるほど、人間は饒舌(じょうぜつ)になるものだ。それは不変の真理だ」    橘がベッドのかたわらに立った。腰をかがめてマットレスに片手をつくと、顔を覗き込んでくる。  そして支配者然とした男は、狼狽の色がよぎった(おもて)を見据えて、薄ら笑いを浮かべた。 「秘め事の真っ最中だった云々という指摘が下種の勘繰りにすぎないと言い張るなら、さしつかえはあるまい。みずやかな裸身を鑑賞するという歓びを損なうブランケットを向こうにやって、身の潔白を証明してみなさい」  佑也は、かぶりを振った。ブランケットをいっそうしっかりと躰に巻きつけて、みの虫のように丸まった。  すると衣ずれが空気を震わせた。直後、耳に息が吹きかけられた。  うなじの産毛が逆立ち、手がゆるんだ。胸がはだけ、その一瞬の隙をついて、力任せにブランケットが剝ぎとられた。  力み返っていた反動で、佑也はごろごろと転がった。勢いあまってベッドから落ちるまぎわに、ヘッドボードを摑んで持ちこたえた。  マットレスを蹴りたたいて起き直る。じゃらじゃらと鎖も床を叩いた。  そのぶん妖しく濡れ光る茎はもとより、よれて肌に張りつく下生えも、淡々しいそれに縁取られた蜜の袋も、秘部のすべてが丸見えになる。  橘は、冷徹な視線をそれらに順ぐりにそそぎ、おどけたふうに肩をすくめてみせた。 「眼福ものの光景だな」  穂先を指で、ぴんと弾かれた。 「気安く、さわるな……!」 「やれやれ、つれないことだ」    革張りの安楽椅子が、ベッドと向かい合う位置に据えられている。橘は、彼の定位置であるそれに腰を下ろした。愛用のステッキを膝の上に置いて、ゆったりと足を組んだ。

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