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第14話
佑也は尻でいざった。ヘッドボードに背中がぶつかると、そこで体育座りに膝を抱えた。
全身に殺気をみなぎらせて、橘を睨み返す。
鷹をかたどった握りの部分に、オニキスがはめ込まれたステッキ。橘のトレードマークのような、それ。
あれを奪い取って、頭をかち割ってやろうか。
しかし絞殺におよんだ先日は、呆気なく返り討ちに遭った。
橘に刃向えば高価な代償を払うことになる。
純潔を穢文字 されるという形で、それを骨身にしみて味わったさいに、抜きがたい恐怖心を植えつけられた。
先日の二の舞を演じて蛮虐をふるわれたら。そう思うと、足がすくむ。
「ふて腐れるのはやめて、ここに来なさい」
〝檻〟の中央に、曲げ木細工のテーブルと椅子のセットが配されている。橘が、それに顎をしゃくった。
不承不承、従う。歩 を進めるにしたがって、いまだに溌溂とした状態にあるペニスが揺れる。そのさまが我ながら滑稽で、佑也は嗤った。
椅子を蹴り寄せた。そこに橘がやってきた。頣 に指を添えて佑也を仰のかせると、橘に対する恐れと嫌悪感がない交ぜにひきゆがんだ顔に、鋭い目を向けた。
一回や二回犯られたからといって、服従してたまるか。佑也は橘を睨 めあげると、ことさら背筋を伸ばした。
ただし橘は身長が一八五、六センチある。それに見合って均整のとれた体つきの持ち主だ。もっとも着瘦せするタイプのようで、かつてスクリーンの中でさらされた半裸体は鍛え抜かれ、鋼のような筋肉に鎧 われていた。
対する佑也は、全体的にほっそりしている。偉丈夫に真正面に立たれると、冷酷な仕打ちを受けた記憶がまざまざと甦って総毛立つ。
それに……佑也は舌打ち交じりに目を逸らした。
シャツの衿元からアスコットタイを覗かせるというぐあいに洗練された装いに身を包んだ橘にひきかえ、シーツを腰に巻きつきそびれたこちらは、真っ裸だ。
佑也は顎を捉えて離さない手をなぎ払った。
鎖を蹴りさばいて椅子にかけると、座面の前部側の脚を浮かせて、上体を背もたれにななめ加減に預けて、ふんぞり返った。
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