ある意味、捨て鉢になった。深呼吸ひとつ、口腔の奥行きいっぱいに幹を迎え入れた。 　秘毛に鼻孔をくすぐられて、ともすればクシャミが出そうになる。口の周りをべたべたにして、ムキになってねぶり回すうちに、舌も顎　、だるくなってきた。 　ところが遮二無二舌をつかっても、樹液がしみ出すどころか、橘のそれは萌む気配さえ見せない。 「あんた、インポじゃないよな」 　息継ぎをする合間に、そう訊いた。弾丸が装填された状態にあるファルスの威力を身をもって味わい、くやし涙にかき暮れた以上、それはナンセンスな質問だが。 「たどたどしい舌づかいが新鮮だが、性的な面で奥手な様子であることをさっぴいても下手だな。その調子では、ひと晩かかっても放埒に導くには至らない」 　 　橘が身じろいだ。その拍子に、尖塔が門歯の裏側をこすりあげていった。 「……ん」 　上顎のデコボコした部分にも快感の切れ端がひそんでいる、と気づかされる。 　これが最奥で猛り狂い、官能の中枢を突きしだかれた感触がそこに鮮やかに甦ると、小さな波と大きな波が下腹部に交互に打ち寄せてくる。 　ぶるり、と佑也は全身を震わせた。 　八つ裂きにしても飽き足りない男だ。生爪を剥がして目玉をくりぬいて全身の骨という骨をへし折って、なぶり殺しにしてやりたい男だ。 　自分はこの男の玩弄物になり下がったのだ、と思い知らされるたびにプライドを削り取られていく気がする。 　自分と橘を引き合わせた運命を呪い、なのに爵香(じゃこう)を思わせる香りが立ちのぼるにつれて、摩訶不思議なことにおかしな現象が起こる。 　筒先が頬の内側の柔壁をかすめると、悩ましい気分になる。倒錯的な悦びに次第に理性を蝕まれはじめて、息が弾む。 　腰が、独りでにもぞつく。 　果ては茎が萌す。ふしだらに形を変えゆくさまが視界をよぎり、ぎょっとした。佑也は、急いで掌で覆い隠した。 　先端のくびれが口蓋垂──通称、喉ちんこ──をふるつかせるのが気持ちがいいなんて、変だ。 「貧乏ゆすりなど、見苦しい。もじもじするのはやめて、口淫に専念しなさい」 「してるって……ん、ん……」 「ところで後学のために訊いておくが。先ほど自分で可愛がったのはペニスだけか。乳首乃至(ないし)耳たぶは、手つかずのままなのか」