23 / 38

第23話

 上の空で、かぶりを振った。男根は一定の硬度に達しても、その状態で安定してしまい、雄々しく勃ち上がるには程遠い。  焦れて、カリをやんわりと咬んだ。すると急激にカサが開いた。  いけ好かない男を多少なりともやり込めたようで、佑也はにんまりした。ためしに鈴口に尖らせた舌を忍びこませてみると、宝刀がまた、ひと回り膨張して舌を跳ね返す。 「筋は悪くない。稚拙な舌さばきを補って余りある努力家であると認めよう」  頭に手が載せられた。手入れが行き届いた指は、労をねぎらうように髪の毛をひと房梳きとる。  あるいは、こめかみを掃き下ろしていって顎の蝶番を揉みほぐす。  とろり、と瞳が潤む。佑也は、それでも上目づかいに橘を睨んだ。  うなじを這い進む手を払いのけ、それでいて、それは、どういう化学変化によるものなのか。  乳房にむしゃぶりつく嬰児(みどりご)のように、夢中になって竿を吸い立てているうちに、ほろ苦い雫がしみ出してきて味蕾を刺す。  その独特のが馬乳酒のように味わい深いエキスに、舌鼓を打ってしまう。  口腔を橘の形にすぼめて刀身を養うと、快美なものが背筋を駆けのぼり、駆け降りる。乳首が勝手にしこっていく。ぷくり、と蜜が鈴口を彩る。  むせて咳き込むのにまぎらせて、まろみを帯びた吐息を(のが)した。  肉体と精神(こころ)が乖離したように、欲望が独り歩きを始める。  手がすべったように見せかけて、茎をひとこすり、ふたこすりしてしまう。果ては足が痺れたふうを装い、腰を浮かせぎみにして、かかとで陰門をこすってしまう。 「蒸し返すのも不粋な話だが。オーソドックスな自慰に終始したと断言する以上、別の器官には指一本触れていないと誓うのだな」 「当たり前だろ! あんな……あんなとこを平気で舐めまわすあんたと違って、ケツの孔に指を突っ込むほど落ちぶれちゃいないんだ!」    ほう、と揶揄する響きをはらんだ声がツムジに降りそそいだ。仰ぎ見る口許に酷薄な笑みがたたえられ、ぎくりと動きを止めた。

ともだちにシェアしよう!