24 / 38
第24話
藪蛇だ、と舌打ちをする。カマをかけられたところに、その名称を馬鹿正直に口にしたことで語るに落ちたのだ。
別の器官? と、きょとんとしてみせるのが正解だったのだ。
後頭部に手が添えられた。摑み寄せられて、脚の付け根に顔が押しつけられた。
佑也はガムシャラにずり下がった。反転しざま、飛びすさって逃げようと目論んだ。
ところが乳首をひねり回すという形で、先手を打たれた。抵抗空しく、鷲摑みに双丘が暴かれた。
あまつさえ、花芯に指が襲いかかる。
「さわる……なっ!」
「これは異なことだ。いじっていないと言い張るにわりには、この花はすでに咲き初 めているばかりか物欲しげに口をぱくぱくさせている」
ぎくり、と背中が強ばった。
手早く前を直しながら、橘が腰を上げた。
「嘘を嘘で塗り固めても、ほころびが生じるものだ」
身がまえたときには手遅れだ。二の腕を摑まれて、引きずり起こされた。佑也は足を踏ん張り、とん、と膝の裏をステッキで突かれてバランスを崩した。
マットレスを弾ませながら、仰向けに倒れ落ちた。
「本日、こなすべき課題を与えよう。〝四つん這いになって足を肩幅に開く。しかるのちに腰を突き出す〟」
「課題っ!? はっ、そんなの知るかよ!」
橘は、ステッキを佑也の鼻先に突きつけてその場に縫いつけておいて、アスコットタイをほどく。それを、意味ありげにひらつかせた。
「きみの泣き顔がとても愛らしいせいだな。マルキ・ド・サド侯爵の末裔ではないはずだが時折、無性にきみを虐めたくなる。さて、高手小手に縛りあげられたうえで、クスコという嘴 状の医療器具で拡張されるのが好みであれば、善処するが?」
「ゲス野郎……っ!」
「けっこう。卑劣漢、悪党、鬼畜、外道、人でなし、好きなだけ罵りたまえ」
佑也はステッキをなぎ払った。ぴしり、と肩口を叩かれて怒りに燃える目を橘に向けた。
自分はサバト──魔宴の席上で屠 られる羊も同然だ。ここで下手に橘に刃向かえば、彼は佑也を実験台に痴虐の限りを尽くすにちがいない。
ともだちにシェアしよう!