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第30話

 橘が眉根を寄せた。獅子のような険しい目つきで佑也を震えあがらせておいて、膝をさすった。  尊大な男にしては〝らしくもなく〟うろたえたふうに足を引っこめると、独りごつ。 「わたしにも、いろいろと都合がある」  声音に苦いものをにじませると、俊敏に(たい)を入れ替えた。全身を鞭のようにしならせて、もがく佑也を組み敷いた。  その余勢を駆って、シーツを皺くちゃにして抗う躰を、へそを折り目にふたつにたたむ。  そして橘は、V字に開かせた両の足をそれぞれ肩にかついだ。 「なぁにが『孤高の名優・橘怜門』さまだ。ひと皮むけば、ただのレイプ魔じゃないか。反吐が出る」 「人間の評価は、言葉づかいによって上がりもするし下がりもするものだ。きみは正しい日本語を学ぶべきだな。さて、授業はこのくらいにして美肉(うまじし)をご馳走になるとするか」  厳かにそう前置きすると、悠然とボトムをくつろげて自身を摑み出した。光の加減で赤みがかって見えるそれは、力を蓄えて猛々しい。  怯えた色が、アーモンド形の双眸をよぎる。橘は、この〝檻〟で法を司る者は誰なのか、それを佑也にいまいちど教え込むよい機会だと捉えている節があった。  悠揚せまらぬ手つきで、自身を数回しごいて完全に勃たせた。それから、右に左に上体をひねって逃げを打つ躰にのしかかった。  怒張に手を添えて、尖塔をぬるみにあてがう。スライドさせて馴染ませると、体重をかけて一気に刺し貫きにかかる。 「ぁ……あ、ああ……あーっ!」 「やはり、きつい……な。痛むか」  案じ顔を向けられて、きっぱりと首を横に振って返した。  群れを率いる狼のごとく、あくまで誇り高くあろうとするさまに感じ入ったという風情だ。橘は口許をゆるめ、ほっそりした下肢を抱え直した。  うがつ角度を慎重に調節すると、ゆるゆると攻め入る。  こじ開けられるにしたがって、内臓がせり上がるような圧迫感が強まる。花芯を中心に、躰が真っ二つになるような痛みが脳天まで突き抜ける。

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