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第33話

「くぅ……っ!」 「佑也、わたしを見るんだ」  橘は〝きみ〟という呼称を用いて、佑也と一定の距離を保つのが常だ。  佑也……と玲瓏(れいろう)とした声で重ねて紡がれると、図らずも胸が高鳴る。  甘酸っぱいものが、ひたひたと打ち寄せてくれば、それにつれて花筒全体にさざ波が立つ。 「佑也、弱音を吐くのを良しとしない。わたしも愚痴をこぼすのは女々しいと蔑むクチだ。おたがい損な性分だな。わたしときみは似た者同士だ」 「……あんたみたいなド畜生と一緒にするな」 「『あんた』呼ばわりは聞き苦しい。先ほども言ったが、橘、あるいは怜門と呼ぶよう早急に改めなさい」 「名前で呼んだら口が腐るだろうが! てめえみたいなクソ野郎は、あんたで十分だ……あっ、抜く……な……」  尖塔が肉の芽から遠ざかる。しなしなとまといつく襞を振り切って、入り口まで退く。 天を衝く昂ぶりが、八割方その威容を現わした。そして花びらがすぼまる瞬間を狙い澄まして、こじ入ってくる。 「っ、ぁ、ああ……っ!」  うがたれ、えぐり込まれて切っ先がさらなる深みに到達すると、蜜が泡立つ。その濃厚な雫は会陰をつたい落ちて、睦まやかに語り合うそこを潤す。  すべりがよくなったことで抽送に俄然、加速がつく。腰を抱え上げられて、下肢が完全に宙に浮いた。  秘部が真上を向き、そのうえで深奥をひと突きされた。  ぎりぎりで持ちこたえている身には、練達の波状攻撃は刺激が強すぎる。 「うっ、ぁ、ああ……っ!」  ひとたまりもなく昇りつめた。果実が弾けて淫液が、しぶく。馥郁と薫るそれは、許容量を超える快感にひきゆがんだ顔にまで飛び散った。  橘が胸に唇を寄せてきた。夜露をまとった野薔薇のように、白濁に彩られてめっきり艶めいた乳首を歯でこそげて舌鼓を打つと、屹立を軸に仰向けに倒れていった。  そしてエクスタシーの余韻に、びくっ、びくっと反り返る躰を腹の上に載せると、そこでピタリと動きを止めた。

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