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第34話

「好きなように動いてみせなさい」 「つけ上がるの、も……いいかげんにし……あっ、ぁ、あっ!」  ずん、と突き上げられて交わりが深まった。 「……ひっ!」 「佑也。わたしときみのどちらが先に音を上げるか。これは一生を()するに値するスペクタクルロマンだ」  にこやかにそう囁きかけてくると、橘はゆるやかに律動を刻んで、佑也をたぶらかす。蕩けた粘膜と、雄渾(ゆうこん)が和して奏でるそれは、妙なる調べだ。  絶対に思い知らせてやる、と佑也は改めて誓った。瞋恚(しんい)(ほむら)──以前、橘がそう評したもので欲情に濡れた瞳を燃え立たせて。  今日、叛旗(はんき)を翻しそこねたら明日、明日もクーデターに失敗したら明後日。  仮に明後日も一敗地にまみれても、いつの日か必ず復讐をなし遂げてみせる。  たとえ橘と刺し違える結果に終わっても、こちらが虫の息にある間に、馬鹿でかい図体を一寸刻みに切り刻んでやる。  暴君が足下にひれ伏して許しを請う図。  それは、さぞかし痛快な光景だろう。  佑也は、うっとりと微笑(わら)った。一時休戦だ、と腹の中で橘を毒づいた。  現在(いま)だけ、現在だけだ……刹那の快楽にひたることを自分に許した。Mの字を形作るように開いた足を踏ん張り、鞍に見立てた腹の上で、ためらいがちに腰をくねらせた。  無意識のうちに襞をすぼめて屹立をあやすうちにペニスが再び萌み、それは、穂先を包み込みにきた手の中で咲き匂う。  オルガスムスとは、ラテン語のある言葉を語源とする。それが意味するものは〝小さな死〟。  夜のヴェールが、しずしずと街を覆っていく。クリスマスを翌週に控えて、色とりどりのイルミネーションがさんざめく。  吐息が蜜をはらみ、それが夜のしじまに溶け入る。佑也はあえかに息絶え、深奥を突きしごかれて息を吹き返し、崩落を迎えるとともに事切れることを繰り返した──。

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