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焔(続編)14
「そんなわけだからあいつ、未だに彼女の一人もできたことないんだ。もちろん男と付き合ったこともない。けど、あいつがゲイだって触れ回ったせいで女は寄ってこなくなったのはいいとして――今度はホントにそっちに興味あるヤツが寄ってきちゃうことになって。だからあいつ、わざとああいうデカい態度で『俺は怖いヤツなんだぞ』って牽制してるんだ。下手にちょっかい掛けられんが面倒だからって」
だがまあ、実際道場育ちで腕は達つから自然と周りが一目置くようになったのだそうだ。
「でもさ、多分だけど……きっとお前のことは――遼二のことは本気で好きなんじゃねえかって。俺、小っさい頃からあいつのこと見てきてるから分かるんだ。あいつがゲイだってのは当初ホラだったわけだけど――お前に会って本当に男を好きになっちゃったんだろうなって思ってさ」
嘘も方便が本当になってしまった、嘘から出た実といおうか何と言おうか――。
「あいつ、自分でも戸惑ってるはずだ。人を好きになること自体が初めてみたいなヤツだからさ。お前にもわざと突っ掛かったり強がったり……気持ちを上手く表現できてないかも知れねえけど。悪いヤツじゃねんだ」
だから誤解だけはしないでやって欲しい、冰はそう言った。
俺は何とも言いようのない――ともすれば涙が滲んでしまいそうな気持ちにさせられてしまった。
「な、遼二。転校初日の日に俺、お前に例の画像を見せたじゃん? 会ったばっかのお前に……何であんなことしたのか自分でもよく分からねえんだけど。何となくお前にだったら打ち明けられるような気がしたっつーか、頼りたくなってーか……。それ以来、お前は俺のこといろいろ気に掛けてくれてた。さっきだって俺が帰るって言った時、一人じゃ帰さねえってムキになってくれたろ? 俺は嬉しかったけど、多分あれ見て紫月不安になったと思うんだ」
今もこうして追い掛けて来てくれた。そんな姿を見て紫月は酷く心が揺れているのではないかと言って冰は心配していた。
「あいつ、まだお前ン家にいるの? それとももう帰ったのか……」
「いや――いる。というか、俺が戻るまで待ってて欲しいと言ったんだ」
冰は驚いたようだが、そんなふうに紫月を待たせている俺の気持ちを察したのだろう。クスッと微笑んでは『そっか、良かった』と言った。
「じゃあ……行く。紫月にはお前からよろしく伝えといて。まあ俺からも後でメッセージ入れるわ」
急なことではあるが、早速今夜発つという。ロビーへ向かうと周焔が待っていた。
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