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面倒なものほど愛おしい(2)
「そんな考え込んでも仕方ないよ。多分、ちゃんと計画したってその通りにはいかないし。でも、なにか失敗しちゃっても大したことない。すぐリカバリーできます」
「そう、かな。そうだといいな」
「できる、できる。二人で後始末しましょう。……ちょっと、楽観的すぎるかな?」
「……ううん。俺が、悲観的すぎたのかも。ごめんな、折角楽しみにしてくれてたのに水を刺すような態度取っちゃって」
少なくとも、不安で沈む自分を元気づけながら寄り添おうとしてくれる宮下となら大丈夫だろう、と考えられるようにはなってきた。助けられたら、次は助ければいい。彼は待っててくれるはずだ。……そもそも、同じ家で暮らしたいと思ったのは一緒にいる時間を増やすためだということを忘れてはいけない。
「バランスが取れてるってことですよ。慎重になるほど俺のこと大事ってことだもんね」
宮下の声掛けは少し不自然なほどにポジティブだ。彼が敢えて、意図して均衡を保とうとしてくれているんじゃないかと思えるほどに。けれど、それにしたって気分の切り替えが早すぎる。真壁よりましだったとはいえ、宮下もそれなりに張り詰めた空気を纏っていたのに。
「悠人くん、だいぶ元気になったね」
「俊明さんの服とか荷物見てさ、ようやく実感が湧いてきたから。これから二人で暮らせるんだなーって。それに、自分よりも慌ててる人がいると冷静になれるって言うじゃないですか。俺がしっかりしなきゃって思ったの」
「頼りなくって悪かったな」
「あ、機嫌悪くした? 最近、拗ねたり僻んだりする俊明さんも可愛いなって思うんだよね」
「そうか? 自分で言うのもあれだけど面倒くさくない?」
「面倒なところに魅力があるんだよ。俺もこれからたくさん面倒くさいところ見せていくけど宜しくね」
にこ、と爽やかな笑顔で宮下は締めくくる。しかし、これからと言わずこれまでも、それこそ恋人になる前から、真壁は既に宮下のちょっと嫌なところを目にしている。初めて宮下の家に訪れたときもそうだった。あのときはまだ、少なくとも真壁は、宮下に恋愛感情を抱いていなかった。
軽口混じりに意地悪なことを言ってしまって宮下の機嫌を損ねたとき、背が高くてかっこいい彼にも可愛げがあることに気づき、気が緩んだことは否定できない。その後のフォローが上手くいかず、勝手に劣等感を抱いて更に宮下の地雷を踏むような失言を重ねた自分のことは、何度思い返しても往復ビンタしてやりたくなる。けれど、互いに悪口をぶつけながらも素直に謝って仲が修復されたあのとき、それまでの生き方とか、考え方を全て変えられた。世界が違って見えてきたのだ。あんなことがあっても恋人として宮下の横にいるのだから、生半可なことで絆は揺るがないだろう。得難い関係性なので、つい守りに入ろうとしてしまうけれど。
現実は理想通りにいかない。宮下が同棲することを提案したときのように、失敗を恐れる気持ちは、当然のように誰にだって存在している。真壁にも、宮下にも。
「説得力ないけどさ、悠人くんがダメになったときは俺が支えになるよ。俺だって、自分の意思で、君と一緒にいたくてここにいるんだから。ただ、俺と過ごすことに対してあんまり期待値高くされると、上手くいかなかったときにこじれて困るかなって思ってしまって」
「確かに俊明さんには期待してるけど、それが家事スキルに対してじゃないのは分かってるでしょ? できないことがあるなんて当たり前だし、二人で生活する時点で新しいことを始めてるんだから、無理に今までやってなかったことをやる必要もないですよ。今まで通りの俺達でいましょう」
頭から背中を通って腰の辺りを撫でる手には、慈しみだけでなくある種の欲も多分に含まれている。その全てを受け取って、真壁はゆっくりと頷いた。
「そんな考え込んでも仕方ないよ。多分、ちゃんと計画したってその通りにはいかないし。でも、なにか失敗しちゃっても大したことない。すぐリカバリーできます」
「そう、かな。そうだといいな」
「できる、できる。二人で後始末しましょう。……ちょっと、楽観的すぎるかな?」
「……ううん。俺が、悲観的すぎたのかも。ごめんな、折角楽しみにしてくれてたのに水を刺すような態度取っちゃって」
少なくとも、不安で沈む自分を元気づけながら寄り添おうとしてくれる宮下となら大丈夫だろう、と考えられるようにはなってきた。助けられたら、次は助ければいい。彼は待っててくれるはずだ。……そもそも、同じ家で暮らしたいと思ったのは一緒にいる時間を増やすためだということを忘れてはいけない。
「バランスが取れてるってことですよ。慎重になるほど俺のこと大事ってことだもんね」
宮下の声掛けは少し不自然なほどにポジティブだ。彼が敢えて、意図して均衡を保とうとしてくれているんじゃないかと思えるほどに。けれど、それにしたって気分の切り替えが早すぎる。真壁よりましだったとはいえ、宮下もそれなりに張り詰めた空気を纏っていたのに。
「悠人くん、だいぶ元気になったね」
「俊明さんの服とか荷物見てさ、ようやく実感が湧いてきたから。これから二人で暮らせるんだなーって。それに、自分よりも慌ててる人がいると冷静になれるって言うじゃないですか。俺がしっかりしなきゃって思ったの」
「頼りなくって悪かったな」
「あ、機嫌悪くした? 最近、拗ねたり僻んだりする俊明さんも可愛いなって思うんだよね」
「そうか? 自分で言うのもあれだけど面倒くさくない?」
「面倒なところに魅力があるんだよ。俺もこれからたくさん面倒くさいところ見せていくけど宜しくね」
にこ、と爽やかな笑顔で宮下は締めくくる。しかし、これからと言わずこれまでも、それこそ恋人になる前から、真壁は既に宮下のちょっと嫌なところを目にしている。初めて宮下の家に訪れたときもそうだった。あのときはまだ、少なくとも真壁は、宮下に恋愛感情を抱いていなかった。
軽口混じりに意地悪なことを言ってしまって宮下の機嫌を損ねたとき、背が高くてかっこいい彼にも可愛げがあることに気づき、気が緩んだことは否定できない。その後のフォローが上手くいかず、勝手に劣等感を抱いて更に宮下の地雷を踏むような失言を重ねた自分のことは、何度思い返しても往復ビンタしてやりたくなる。けれど、互いに悪口をぶつけながらも素直に謝って仲が修復されたあのとき、それまでの生き方とか、考え方を全て変えられた。世界が違って見えてきたのだ。あんなことがあっても恋人として宮下の横にいるのだから、生半可なことで絆は揺るがないだろう。得難い関係性なので、つい守りに入ろうとしてしまうけれど。
現実は理想通りにいかない。宮下が同棲することを提案したときのように、失敗を恐れる気持ちは、当然のように誰にだって存在している。真壁にも、宮下にも。
「説得力ないけどさ、悠人くんがダメになったときは俺が支えになるよ。俺だって、自分の意思で、君と一緒にいたくてここにいるんだから。ただ、俺と過ごすことに対してあんまり期待値高くされると、上手くいかなかったときにこじれて困るかなって思ってしまって」
「確かに俊明さんには期待してるけど、それが家事スキルに対してじゃないのは分かってるでしょ? できないことがあるなんて当たり前だし、二人で生活する時点で新しいことを始めてるんだから、無理に今までやってなかったことをやる必要もないですよ。今まで通りの俺達でいましょう」
頭から背中を通って腰の辺りを撫でる手には、慈しみだけでなくある種の欲も多分に含まれている。その全てを受け取って、真壁はゆっくりと頷いた。
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