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しかし、浅はかだったと悔やんだところで過ぎた時間は戻らない。佐藤は香川の真の企みに気づけずに、データを盾に脅してくるなら、それを録音して不利な状況を逆転させてやろうと考えた。
連れていかれたカクテルバーで酒を勧められ、口をつけたところまでは記憶にあるが、気がついたらここにいた。こんな場所に足を踏み入れたのは初めてだが、そんなことはもうどうでもいい。それより今は――。
(アイツは……帰ってくるのか?)
ここはラブホテルの一室で、もしも香川が帰ってしまえば、最悪な事態になってしまうと焦りが生まれてくるけれど……与えられている快楽の方が佐藤にとっては強すぎて、思考はぐるぐると巡るけれど、すぐに散り散りに霧散した。
「はっ…やっ…ああっ!」
まず一回、射精できずに達してしまう。
同時にアナルが伸縮して、胸が激しく上下するが、高められた身体の熱は醒めること無く次の快楽に縋りついた。
「あつっ……かゆいっ」
浅い場所が切なく疼いて無意識に腰がヘコヘコと揺れる。ペニスを挟んで振動しているローターの動きに奮え、訳が分からなくなってしまった佐藤は涙を流すけれど、唯一助けてくれる人物は出かけてしまってここにはいない。
「やっ…あぅぅっ! だれか…たすけっ……あぁっん」
快楽に慣れていない分、陥落するのは早かった。十分と経たない内に佐藤が溜まらずそう叫ぶと、ローターがピタリと動きを止めてペニスをパシリと叩かれる。
「ひっ! やぁっ!」
「これが今日の獲物? 顔は見えないけど、身体は可愛いじゃん」
「……だ、誰?」
「人に名前聞くときは、自分から言えって教わらなかった?」
「いっ……いだぃっ」
「ほら、名前」
聞こえてきたのは、今まで一度も聞いたことのない声だった。
「あ……アヴッ!」
ローターを強く引かれて剥がされ、痛みに顔を歪めて喘ぐと、乳首を摘み上げられそのままギュウっと抓られる。
「言わないと、乳首とれちゃうよ」
愉しそうに囁く声に溜まらず自分の名前を告げると、喉で笑った男は乳首を解放してから指でこねた。
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