11 / 123

10

「あっ…あ……」 「ほら、頑張って」  まるで子供をあやすようなその言い方に、和真の目からは涙が溢れ、緩く乳首を刺激されながら、「和真はちゃんと言えるよね」と、耳朶へ甘く噛みつかれれば、ほんの僅かに残されていた男としての矜持が崩れた。  *** 「……マジで可愛いんだけど、本当に初めてなの?」 「ああ、それについては間違いない。悪い虫がつかないように見守ってた」 「へぇ、流石だな。あれからずっと監視してたとは気づかなかった」 「薫へのサプライズプレゼントにしたかったからね」 「あっ……やぁ…そこ、触らなっ…うぅっん」  目下で喘ぐ和真の口へと指を差し込んで歯列をなぞると、応えるように舌を差し出し、猫のようにペロペロと舐める。 「ありがとう、嬉しいよ。けど何年がかりだ?」 「リスクを犯しただけの価値はあった。お前も欲しいって言ってたろ? そろそろ頃合いかと思って」 「まあ、俺たちの環境も整ったことだしな」  自分によく似た男がニヤリと口角を上げ、一度肛門付近まで抜いた指で再び体内を穿つと、面白い程に身体が跳ねて、戒められたペニスの先から透明な液がタラタラと垂れた。  男……香川(かがわ)(かおる)は奈津と同じ年齢の従兄弟(いとこ)だ。  幼少の頃からずっと兄弟のように一緒に育ち、初めて好きになった相手も性行為をしたのも薫だった。ただ、気質まで似ているせいでお互いタチを譲れなくなり、結果互いが誰かを犯す姿に感じるようになった。 「これまでのは独占欲が強すぎた」  薫の唇にキスを落とし、奈津は和真のペニスを握る。二人は見た目が優れているから二丁目辺りで声を掛ければ、三人で愉しもうと言っても相手に苦労はしなかった。だから薫の言う〝環境が整うまで〟の数年間は、適当に相手を選んでいたのだが、二人の間に入る人間は必ず徐々に図々しくなり、前の相手などは愛されたいと刃物を持って暴れだした。

ともだちにシェアしよう!