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『まさか、合意ですよ。俺の上司だったんで、こう見えてもう三十路手前です。ね、係長?』
『やっ……も、やだ! 合意じゃ……無い。たすけ…助けて!』
『え? この子……なに言ってんの?』
だから、必死に声を絞り出すが、和真ができたのはそこまでだった。
『ああ、勝手にコート脱がせて他人に見せたから、怒ったんじゃない?』
『違うっ、違う…助けてっ…んぐぅっ』
『気が立ってるみたいだ。ママ、ごめんね……落ち着かせるから、他の席に行ってやって』
『ふぅ……んぐぅ!』
薫の大きな掌に、口を覆われ息が苦しい。
『……分かったわ。あんまり無茶しないのよ。ここはSMバーじゃないんだから』
『分かってるよ、ありがとうママ』
行ってしまう。折角助けを求めることができたのに、もう一歩で届かなかった。
『なあ、薫、どうしてやろうか』
『ん、そうだな……とりあえず、折角の誕生日だから、今日は楽しませてやろう』
刹那、優しかった奈津の声音が氷のように豹変し、それとは逆に薫の声が愉しそうな含みを持つ。
『薫は甘いよ。でも、薫がそう言うなら、仕方ないか』
『奈津、おいで』
『ん……』
目の前で、濃厚なキスを交わし始めた二人の姿を目に映し、見ているだけのはずなのに、口を塞がれた和真の下肢は何故かズクリと熱を持った。
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