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 ***  それは、想像など及ばないくらい、美しく淫靡な光景だった。  倒錯的(とうさくてき)と、言うのだろうか?  社員として働いていた彼は神経質で生真面目なイメージだったけれど、いま目の前で痴態を演じる彼はまるで別人だ。 「和真、入ったよ」  愛しげに響くのは、薫という男の声。奈津の従兄弟という話だが、兄弟のように良く似ている。そして……それと同時に跳ね上がる、華奢で白い和真の肢体。  刹那、透明な管を黄色味を帯びた液体がせり上がり、そのまま拘束された和真の口の中へと流れ込み――。 「ぐっ…んっ……」  吐き出す術の無い彼は、喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。 「上手だ、えらいね」 「くぅ……ん」 「社長も、誉めてやってください」  細い喉元を撫でながら、そう告げてくる奈津へと頷き、加納はゆっくり裏筋をなぞり、それから会陰へ指を這わせる。 「ふっ……ぐぅ!」 「やはり、ここも開発済みか」  軽く撫でただけだというのに、過剰な程の反応を示す和真の姿を目に映し、加納はニヤリと口角を上げ、「佐藤君、よく頑張ったね。私からも……褒美をあげよう」  そう告げるやいなや、三本の指を立て、和真の会陰を強く押した。 「ヴゥッ! んっ、んぐぅっ―っ!」  ドライオーガズムによる嬌声は、抑える事が困難だ。だからこそ、男としての矜持を打ち砕くには十分の効果がある。 「よかったな……和真、尊敬する社長に誉められて」  唇から養生テープを剥がしながら、薫が和真に声を掛けるが、カタカタ体を震わせる彼の瞳は既に何処か遠くへ飛んでいた。 「和真、ほら、社長にちゃんとお礼……言えるよな」 「ひっ、いだ……あ、ありがと…ござ……ました」  優しく告げた奈津の指が、カテーテルを掴んでそれを上下させ、同時に薫が亀頭に付いたリングピアスを引っ張れば、既に朦朧としていた和真が途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

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