31 / 123
14
「君は、助けて欲しいんじゃないのか?」
(助…け? そうだ、俺は……)
ここから助け出して欲しい。ずっとそう思っていた。
(けど、だけど……)
「アァッ……くぅっ」
「ちゃんと言わないと分からないよ。ほら、言いなさい、どうしたいのか……このままでいいのか?」
「ふっ……うぅっ……やめっ、やめて!」
掻き混ぜる指が三本に増やされ、前立腺を抉るその動きに、張りつめていたペニスの先、尿道口から透明な液がポタポタと垂れて床を濡らす。
「そろそろ私も限界だから、君の孔を使わせて貰う。終わるまでに、返事をきちんと考えなさい」
臀部をペシリと平手で叩かれ、和真の体が強ばった。同時にアナルへ切っ先が触れ、それが中へと侵入してくる。
「やっ、やだ! 入れな…でくださ……たすけ、たすけて、ナツ、カオル……行かな…で」
「なるほど、そういう事か……謀 られたな」
必死に紡いだ言葉は掠れて最後の方は空気に溶けたが、それでも聞こえていたらしい……動きをピタリと止めた加納が、溜め息交じりに呟いた。
「君の気持は分かった。でも、これは、君の主人との約束だからね。遠慮なく使わせて貰うよ」
「やっ、ああっ! やだっ……あぅっ!」
刹那、加納の猛りにアナルを奥まで貫かれ、その衝撃と快感に……和真は床を掻き毟りながら、なんとか前へ逃れようとするが、その力は余りにも弱く、なんら抵抗にはならない。
(たすけ……て)
自分という存在は……互いに思い合っている二人が愛し合う為のただの道具だ。
そこから逃げ出したいと何度も試みたけれど失敗し、その都度酷い折檻をされ、従順になれば誉めてもらえた。
(だけど、こんなのは……嫌…だ)
そんな過酷な生活の中、いつのまにか、二人に芽生えたこの感情の本当の名前を和真はまだ知りはしない。ただ、他の男に犯されるのは、心の底から嫌だったし、なにより自分を置いていってしまった事が悲しかった。
ともだちにシェアしよう!