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 天涯孤独になったと思い、悲しみと不安の中でどうすればいいか分からずにいた和真だが、父方の叔父(おじ)という人物が葬儀にやってきたことで、その生活は一気に変わった。 『ああ、優真(ゆうま)にそっくりだ。今まで会いに来られなくて済まない』  初めて会う父親の兄という人物は、弁護士を伴っており、和真には他の親族がいないことを伝えた。  写真や自分の記憶に残る優し気で線の細かった父とはあまり似ておらず、男らしく彫の深い容姿や立派な体格に内心(ひる)んだ記憶がある。  叔父は、一緒に祖父を見送った後、葬儀の準備を手伝ってくれた祖父の友人や近所の人達へ挨拶をして回ってから、和真に一つの提案をした。 『私にも家庭があるから一緒には暮らせないんだ。だからマンションを買って、身の回りの世話は通いの家政婦を付けようと思ってる。資金については君の父親やおじいさんが残した財産で十分に賄えるから心配ない。一人は寂しいだろうけど、私もちょくちょく顔を出すから』  提案というよりは決定事項だったのだが、身寄りの無い和真は叔父にお願いしますと言うしかなかった。  それから和真の生活は一変し、マンションで淡々と1人暮らしを続けてきた。もともと社交的なほうでは無かったが、高校、大学を通じ友人もいたし恋だってした。  一人暮らしを始めた当初、叔父は月に一度は訪れていたのだが、仕事がかなり多忙らしく徐々に足は遠のいていった。それについては寂しかったが、彼のおかげで不自由せずに暮らせていたのだ。仕方のないことだと思う。

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