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大学を卒業してからはとにかく仕事に打ち込んだ。
そうしているうち役職が上がり、仕事にやりがいを感じていた。
数年前に新人として配属された香川奈津との関係は、上司と部下の範疇 を超えることは無かったが、彼の容姿が人目を引くとの認識はしていたし、仕事面での優秀さと、それを鼻にかけない人柄の良さを高く評価していた。
それがなぜ、こんな事態になっているのか分からないし、長期に及んで失踪しているのにも関わらず、だれも自分を探さないのかと絶望的に気持ちになった。
叔父についてもここ数年は連絡を取り合っていない。淡泊なのかもしれないが、こちらから連絡をしても話すことが見当たらないし、叔父には叔父で家族もあるから忙しいとも思っていた。
それに、叔父のことを思い出すと、なぜか酷く落ち着かない気持ちになった。
「……なおさん」
「それは誰の名前?」
「なおさんは……」
鼓膜を揺らす低い声音と髪を撫でてくる大きな掌の感触に、和真は意識を覚醒させ……すぐさま体を震わせる。
すると、至近距離から自分を見つめる深い色をした薫の瞳が、眼鏡のレンズの向こう側で僅かながらに細められた。
「質問に答えろ」
「お……叔父です」
特に隠す理由もないから和真は正直に返事をする。と、褒めるみたいに頬へキスをされ肩を優しく抱き寄せられた。
和真は今、リビングにあるソファーに座って薫と一緒に映画を観ている。とはいっても、始めのあたりしか覚えてないから眠ってしまっていたようだ。
こんな状況で眠るだなんて今までに無いから驚くけれど、和真が気づいていないだけで、体は疲弊しきっていた。
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