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「ん……うぅ」
唐突に、意識を現在 へと戻される。理由は和真が呻いたからで、足元に跪 かせた彼へとシャワーを浴びせていたのをすっかり失念してしまっていた。
「ああ、ごめん。苦しかった?」
いったんシャワーの湯を止めてから手早く衣服を脱ぎ去った奈津は、ふらつく和真の背中を支え、ぐっしょりと濡れた髪をかきあげて下から顔を覗き込む。
「目が真っ赤だ」
泣きすぎたせいで腫れた目元へとキスをしてから抱き上げると、泡で満たされたバスタブへ入り背後から彼を抱きしめた。
「今日は……和真が心配だったから、早く仕事を切り上げた」
「……あ、ありがとうございます」
胸の尖りを飾るピアスを弄びながら囁くと、肌がほんのりと赤く色づき、強ばっている和真の体がヒクリと震えるのが分かる。
「嬉しい?」
「はい、んぅ…嬉しい……です」
リングピアスを強めに引いて耳たぶへ軽く歯を立てれば、小刻みに体を震わせながら、奈津の求める返事を紡いだ。
それが本心ではないことは、奈津にも薫にも分かっている。
しかし、意志をねじ曲げられ、絶望的な状況の中で愉悦に溺れる彼の姿は息をのむほどに妖艶で……もしかしたら、飼われているのは自分たちの方ではないか? と、思うことも時々あった。
そんな風に見えてしまうことが、彼にとっての悲劇なのかもしれないが……。
「どうしてほしい?」
「ちくびで……イきたいです」
「いい子。だけど、体調が良くなるまでは我慢な」
そう耳元で囁けば、ほんの僅かな変化だけれど、ホッとしたように肩から力が抜けたのを奈津は見逃さない。
きっと無自覚なのだろうが、彼を手に入れて一年ほどが経過したにも関わらず、完全に堕ちていないところが嗜虐心を余計に煽った。
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